第10章 超えるべき壁たち
「……………」
「……………」
………あ、しませんか。そうですよね…いくらなんでも鞠蹴りなんて小さい子しかしない……。しかし、栗花落さんは再び銅貨を上に投げ、そして綺麗に手の甲で受け止めた。銅貨は表だった。
「………………ええ」
栗花落さんは少し面倒な表情をしながらも外へと足を向ける。その背を見て私は気づいた。この人…自分じゃ決められないのだ…と。兄の言葉を借りるなら、心の声が小さいのだ。この人がどうして自分の声を聞けなくなったのかは分からない。だが……それはあまりにも生きづらいのではないか…とお節介ながら思ってしまう。
「……………?」
あなたから言い出したのにやらないの…?と、先に外で待つ栗花落さんが私に視線を向ける。私は動きやすいように足の袖を捲った。
「よぉーし!! 負けませんからね!!!!」
その後、私は自分のこの言葉を後悔する羽目になる。
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「あらあら。少し目を離しただけで随分仲良くなりましたね」
胡蝶さんが戻ってきた頃、地に膝をつく私と飄々とした様子の栗花落さんという対照的な2人が、庭の木々をボロボロにしている光景がそこにはあったのだった。