第9章 それぞれの任務
私は床に頭が付いたのが分かっていても、さらに強く頭を下げた。今は姉の話はできない。しかし、ここで許してもらえなければ私はあの逃げ出した頃と何も変わっていないことになる。私は許されるまで頭は上げない…そんな思いだった。煉獄さんが息を吸う音が聞こえ……そして……
「と、俺も君の生存を富岡から聞いた際にそう思っていた。が、どうやら君は本当に何も知らなかったようだな」
フッと笑みを浮かべ、私の頭に手を置く煉獄さん。私に向けられていた圧はなくなり、私は思わずポカンとする。
「試すようなことをしてすまなかった。だが、これで君の鍛錬に集中できる」
何が何だか分からないでいると、突然後ろから声が現れた。
「そうですよ煉獄さん。脅しすぎです。可哀想に…こんなにも震えてしまって…」
全く気づかなかった。ここに煉獄さん以外の人がいるなんて思わなかった。その人は紫色に染まった髪がよく似合う華奢な女性だった。蝶の髪飾りをしており、蝶の羽のような羽織りを身にまとっている。
「はじめまして。蟲柱の胡蝶しのぶと申します。以後お見知りおきを」
にこっと笑みを浮かべる胡蝶さん。……この人も柱なんだ…。でも、なんで煉獄さんの家に……
「お館様の命令で、ここ数日間俺と胡蝶はこの家で君を見張っていた。その理由は、君が鬼舞辻無惨の監視下にあるかもしれないという疑いがあったからだ」
「っ!?」
突然、煉獄さんの口から鬼舞辻の名前が飛び出し私は驚いて彼の顔を見た。
「富岡の報告の中に、君が鬼に襲われた者と同行していたとあった。あの事件以来消息不明だった君が、数年後再び鬼に住んでいた家を襲われる…これは異例なことだ」
煉獄さんの言う通り…住んでいた年数は違ったが…数年前の家も竈門家もどちらも鬼の襲撃によって失った。私を餌にして鬼舞辻が家族を食い物にしたと思っていたが………まさか……