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鬼滅隊の兄と、鬼の姉

第9章 それぞれの任務


汗びっしょりで飛び起きた私は、辺りを見渡した。見覚えのない部屋、いつ眠りについたか分からない布団、そして身に覚えのない服。しかし、呼吸が段々落ち着いて来た頃には、私は炎柱によって稽古を受けていたことを思い出す。

「…体も綺麗になってる…」

まさか煉獄さんがしてくれたのか? 私は複雑な気持ちになりながらも、立ち上がり部屋を出た。

「起きたのか?」

煉獄さんはすぐ近くにおり、縁側でお茶を啜っていた。…綺麗な姿勢の正座で。外はもう日が落ち、辺りは暗闇に包まれていた。

「今日の鍛錬は終いだ。明日からは早朝から行うのでしっかり付いてくるといい。話は以上だ。夕飯は時間になれば部屋に呼びに来るだろう」

早口でそう言うと、再びお茶を啜る煉獄さん。話は以上だと言われたが…私はその場で座り姿勢を正した。

「……お久しぶりでございます。次の炎柱となられ、益々ご活躍されていらっしゃること心からお慶び申し上げます」

「うむ!! あれから数年の時が経つが、君も健やかに成長して何よりだ!!」

ケラケラと笑う煉獄さん。私は少し安堵しながら顔を上げ、そしてそれが間違いだと気付かされる。煉獄さんは私の方を向いていた。その顔を見て、私はゾッと冷や汗が出た。

「そして…前炎柱、およびその家族が上弦の鬼と思われる者に惨殺され…同じほどの時が経つ」

それは…まさに殺意と呼べるものだった。私はその圧に押しつぶされそうになったが、それでも彼の顔から目を背けることは踏みとどまった。息がしづらく、また心の臓の音もバクバクと鳴り続ける。

「あの後、どれだけ探しても君の死体だけが見つからなかった。てっきり他の場所で喰われたとばかり思っていたが…まさか生きて再びこの場に戻ってくるとはな」

煉獄さんが怒りを顕にするのは分かる。前炎柱は煉獄さんの分家にあたる…言わば血を分けた親戚同士。その親戚を惨殺され、普通でいられるわけがない。私はぎゅっと拳を握りしめた。

「………その件につきましては…何も言うことはありません。…私はあの時あの場から逃げ出しました。昔の罪は消えません。しかし…どうか鬼殺隊で鬼を斬り、償いをすることに対しお許しいただきたいのです。私はもう……逃げ出したくないのです。身勝手なお願いとは承知の上ですが………どうか……どうか………お願い申し上げます…」
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