第9章 それぞれの任務
きっと…久々に炎の呼吸の技を受けたからだろう。私は昔の夢をみていた。
民家の布団の中にいた。傷の手当もしてあり、服も綺麗になっていた。恐らく、倒れる前に保護してくれた鱗滝さんや冨岡さんに会ったのだと思うが、その時の私にはその記憶は無くなっていた。ただ私を支配していたのは恐怖というものだけ。体が震えが止まらず、そして私は何日も意識があるのかないのかという狭間でウロウロしていた。
そして、次に気づいた時…私は鬼殺隊の家にいた。そこは、柱を担ったことのある歴史ある家であり、私は継子としてその家の子となった。
「お館様の命により、お前を継子とする。…せっかく拾われた命。次の炎柱となれるよう励むといい」
その時の炎柱であった男がそう私に言うと、ギラギラとさせた目で私を見た。その時、丁度炎柱だった人が突如任を降りたらしく、どう足掻いてもその人に勝てなかった男は、とうとう自分の番が来たと野心を燃えさせていたのだ。男は私の両肩を強く掴んだ。
「あの家には息子が2人いる。妻が亡くなってからあいつは腑抜けてしまった。教えも放棄しとるらしいからな。…あの長兄はあいつの全盛期とは言わんまでも、才に溢れている。次の柱はそいつだと噂されているほどに。だが、そうはさせん。やっと俺の番が来たのだ。次はお前に継がせる。俺の妹の子が炎柱となる時までの代わりだ」
だが、そう豪語していた男の野心もすぐに終わりを迎える。鬼が…鬼舞辻無惨直属の鬼が…屋敷を襲ったからだ。
「な…何故…ここに鬼が!?」
男は全員喰い殺され、何故か女だけ喰われなかった。だが……
「お前の…お前のせいだ!! お前が鬼を呼び寄せたのだろう…鬼舞辻魅子!!!!」
燃え盛る炎の中で、私を睨むその女の人は…泣きながら子供を抱いていた。その子供は継子であり、炎柱の妹の子。その瞳には光はなく、鬼との闘いで体中ボロボロだった。
「…わ、私は…」
私は何も知らなかった。だが、この惨劇は誰がどう見ても私のせいだ。現に…その場に鬼舞辻無惨が現れ、喰い殺されなかった女たちも一瞬で赤で染め上げた。
「………………お前の……せいで……」
目の前の女の人は口から血を吐いて、息絶えた。彼女のその時の鋭い目…あの目が今でも脳裏に残っている。
「お前はあのまま死ぬべきだったのだ」
そう語っていたあの目は…今でも夢で私を責め続けるのだ