第8章 おかえり
それから15日後が過ぎ、私たちの刀が届く日となった。兄は待ちきれず、外の様子を何度も何度も確認していた。
「あっ鱗滝さんあの人かな?」
風鈴の音と共に現れたのはなんとも奇妙な男性だった。
「ふ、風鈴…」
兄が呆然とその名詞を口にするのも分かる。なぜなら、その人は笠の周りに風鈴を何個も装飾品として付けていたからだ。私は思わず兄の袖を掴んだ。
「俺は鋼鐵塚という者だ。竈門炭治郎と竈門幸子の刀を打った者だ」
私と兄は顔を見合わせて、慌てて姿勢を正した。
「竈門炭治郎は俺です。竈門幸子はこちらです。中へどうぞ」
「竈門幸子です。御足労いただきありがとうございます」
私達はそれぞれ挨拶をした……つもりだった。しかし、鋼鐵塚さんはそんな私たちなんか目にも入らないようで、
「これが"日輪刀"だ」
と風呂敷を下ろして刀を出し始めた。私も兄も困惑して中に入るよう再度奨めたが……
「だ…駄目だ。人の話を全然聞いてくれない」
本人の目の前でついこぼしてしまうほど、彼はこちらに視線を投げかけることもしなかった。そして、兄が地べたに座る彼と同じ目戦になった時、ようやく彼は顔を上げる。その顔を見て私達は驚いた。
「うわっ!?」
「ひょっとこのお面!?」
この鋼鐵塚さんといい、鱗滝さんといいお面を被るのが流行っているのだろうか?
「んん?んんんんん??」
鋼鐵塚さんは兄の顔をまじまじと見つめ…そして少しばかり興奮したように言った。
「あぁ、お前"赫灼の子"じゃねぇか。こりゃ縁起がいいなぁ」