第8章 おかえり
聞けば、髪の毛と目の色が赤みがかかっている子は、火仕事をする家に生まれると縁起がいいと喜ばれるのだそう。
「こりゃあ刀も赤くなるかもしれんぞ。なぁ鱗滝」
「ああ」
ようやく家に上がってくれた鋼鐵塚さんは、ウキウキと体を動かした。そして、私と兄に刀を差し出す。
「日輪刀は別名色変わりの刀といってな。持ち主によって色が変わるのさ」
先に兄が刀を抜くと、その色が変化する。
「黒っ」
「黒いな……」
期待されていた分、落胆も大きかったようだ。2人の反応に、兄も自分の刀を不安そうに見つめた。
「えっ黒いとなんかよくないんですか!? 不吉ですか!?」
「いや…そういうわけではないが…あまり見ないな漆黒は…」
歯切れの悪い言い方をする鱗滝さんに、キーっと癇癪を起こす鋼鐵塚さん。それを横目に見て、私もゆっくりと刀を抜いた。
「………幸子はどうだ?」
鱗滝さんが視線をこちらに向ける頃には、私も刀身を顕にしていた。そして…私の色は……
「………銀……」
私の色は元の刀の色とあまり変化がなかった。実際に色が変わるところを見ていないと不安になるくらいだ。私の刀を見て兄に突っかかっていた鋼鐵塚さんの動きが止まる。
「鱗滝!!!! お前はいい弟子を持ったな!!!!!!!!」
と上機嫌で鱗滝さんの背をばしばしと叩く鋼鐵塚さん。…えっと…
「…銀も黒以上に稀な色で、儂も見るのは初めてだ。なるほど…確かに見るだけでは色が変わっておらぬようにも見える」
鱗滝さんの言葉で、大丈夫なのかと不安が過ぎる。この色変わりの刀で鬼殺隊への適正が分かるからだ。
「いやいや!! これは芸術だ!!!! お前っ!! よくやった!!!!」
上機嫌になった鋼鐵塚さんが、ばしばしと今度は私の背を叩く。
「銀の刃はどんな色でも染まる。その刃を手にしたものは、ひとつの流派だけではなく他の流派も極めたと言われている」
………他の…流派も…。私は陽光に反射してキラキラと光る刀身をじっと見た。ということは、私はどうやら不適正というわけではないようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
「黒に銀か。お前達らしい色じゃないか。互いに支えあい極めていくといい。炭治郎、幸子」
お茶を啜りながらのんびりと言う鱗滝さんに、私達は顔を見合わせて微笑んだ。
「「はい!!!!!!」」