第2章 残酷
「幸子、ちょうどよかった」
母に呼び止められ、私は後片付けを始めようとした手を止めた。
「どうしたの?お母さん」
「炭治郎が麓の村で炭を売ってくるらしいの。悪いけど、お弁当を作ってくれない?」
私は頷き、余っていた少しのお米でおにぎりを作り始めた。ふと、外の様子を見ると、雪がかすかだが降ってきている。これは少し降りそうだ。
「雪が降ってるのに、お兄ちゃん山を下るの?」
「私も止めたんだけど…あの子は優しい子だから」
きっとお兄ちゃんのことだ。家族が少しでも楽に過ごせるようにと考えているのだろう。私は最後のおにぎりを握り終わり、それを急いで詰め終えた。
「じゃあ、私お兄ちゃんのところに行ってくる! もう出たんでしょ?」
「ごめんね。気をつけて幸子」
「後片付けは帰ってからするね」
私が外に出ると、降る雪の量は多くなっていた。私は布を首に巻き、先を急いだ。