第7章 山ほどの手が
「げひひひひ!! 俺は手足をもらう!!!!」
「じゃあ、俺は胴体」
「おい…俺の獲物だぞ」
私は生唾を飲み込んだ。我妻さんを守りながら…刀を抜かずにどこまでやれるか…。我妻さんは相変わらず気絶して………ん??
「………寝てる!?」
鼻ちょうちんを膨らませながら、我妻善逸さんは寝息をたてていた。こ…この状態で寝れるなんて…凄い大物…
「げへへへ!! なんだそいつ!!!!」
そして、その鬼は私に向かって長い爪を振りかぶった。
「まずはお前からだ!! 死ね!!!!」
このままじゃ、我妻さんも巻き添えをくらう。私は精一杯彼を揺らした。
「我妻さん!!!! 我妻さん!!!! 起きて!!!! このままじゃ死んじゃう!!!!!!」
爪が私たちを襲うまであと少し。私はせめてもとばかり…彼をかばうように覆い被さろうとして……
「え……」
そこに我妻さんはいなかった。うめき声が聞こえ、私がそちらに首を傾けると…
「我妻さん……?」
そこには眠っていたはずの我妻さんが、鬼と私の間に立っていた。先程の彼と雰囲気がまるで違う。彼は静かに私に背を向ける。
「…………雷の呼吸…」
ビリビリと体を貫くような音が辺りに響く。そして、我妻さんの姿が消えたかと思うと、鬼たちの首が宙を舞う。まるで雷が落ちたかのような音が鳴り響く。………あれはこの音だったのか…とぼんやりと私は思い、立ち上がった。
「………ふがっ!? えええええええ!?!? 何これ!!!! また黒焦げなんですけどぉぉぉぉ!?」
再び錯乱状態に陥る我妻さんに私はお礼を言おうと微笑んだ。しかし、
「あっ!?!? 幸子ちゃん!? 怪我は?怪我はしてない?? 良かったぁ!!!! しっかし、こんなに強いなら最初に言ってよぉ!!」
と我妻さんはそう私に言う。あまりにも雰囲気が違いすぎる…私は混乱した。そして、私は考えるのを止めた。
「……先を急ぎましょう。我妻さん」
「はぁい!! 幸子ちゃん!!」