第7章 山ほどの手が
「幸子ちゃん!! この花、さっきのところに咲いてたんだぁ」
私はその花を受け取り、お礼を言った。我妻さんは育手のおじいちゃんがあまりにも厳しく、逃げ出したくて最終選別を受けたらしい。
「いやぁ!! 最初は死ぬほど後悔したけど、来て良かった!!!! 幸子ちゃんみたいな可愛い子とお知り合いになれるんだもん!!!!!!」
クネクネと体をよじらせる我妻さんに困った顔を向けながら、私は足を進めた。段々兄から距離が遠くなる。大丈夫だろうか…。最悪の光景が頭を過ぎり、私はぎゅっと握る拳に力が入るのが分かった。
「……幸子ちゃん?」
我妻さんが心配そうに私の顔をのぞき込む。私はなんでもないと首を振り、先を急ごうと足を速めようとした。
「あっ!! 幸子ちゃん!!!!!!」
突然、我妻さんからガシッと抱きしめられる。錯乱状態になったのか…と私が慌てて彼を引き剥がそうと手を伸ばすと……私の足元スレスレのところを何かが通り過ぎたのが分かった。
「ちっ!! 」
遠くの木から舌打ちの声が聞こえたかと思うと、鬼が私たちの近くへ飛び降りた。我妻さんがヒィッと悲鳴が上がる。
「今頃、足が真っ二つにできていたのによ!! 無駄な足掻きしやがって!」
私はゾッとして自分の足を見た。そして、私に抱きついて泣きはじめた我妻さんを見る。もしかして…この鬼の罠に気づいた…??
「イヤァァァァァ!! 死にたくないよォォォ!!!!!!!!」
再び錯乱状態に陥る我妻さん。腰の刀を抜こうにも我妻さんがしがみついているから抜くに抜けない。
「我妻さん!! 落ち着いて!! 刀が……」
「幸子ちゃん…助けてぇぇぇぇぇ!!!!!!」
白目状態の我妻さんと、ニヤニヤしながらこちらに近づいてくる鬼を交互に眺める。ど……どうしよ…!!
「うん!! 私が我妻さんを守るから!! だから…ちょっと離し……」
「一気に2匹。ラッキー」
「ひいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
間近に迫ってきた鬼に意識が飛ぶ我妻さん。しかし、私の腰はしっかり抱きしめたまま。
「我妻さん!!!! 我妻さんしっかり!!!!!!」
彼の体を揺らすが、白目を向いたままピクリともしない。その間にも鬼が次々と現れる。ぜ……絶対絶命の危機!!!!!!