第7章 山ほどの手が
「………ん?」
その場から移動しようと私が辺りを見渡した時、私は異変に気づいた。
「………何か嫌なものが近づいてる…」
兄を慌ててみると、兄は鼻を抑えていた。
「幸子!!!! 来るぞ!!!!」
兄の言葉に私は刀を構える。茂みから何かが飛び出してきた。
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!! 」
それは涙と汗でぐしゃぐしゃにした私たちと同じくらいの子供だった。最終選別の受験者か。その人は刀を振り回しながら叫んだ。
「何で大型の異形がいるんだよ!! 聞いてないこんなの!!!!」
私はヒッと思わず息を飲んだ。大型の異形…その人が言ったことはその通りだった。その異形の鬼は沢山の手を身にまとった姿をしていた。片手に子供の死体を持ち、ニマニマと笑みを浮かべていた。その鬼は逃げ出すその人の足を沢山の手で掴んだ。私は足に力を込めた。
「「水の呼吸…弐ノ型 水車」」
再び兄と同時に技を出し、兄はその人の捕まえていた腕を、私はその鬼の他の腕を切り落とした。ギョロリと私たちを見る鬼。
「また来たな。俺の可愛い狐たちが」