第7章 山ほどの手が
「………暗いね」
「そうだな。幸子、俺から離れるなよ。あと、幸子は俺より夜目がきくから何かあったら教えてくれ。俺も死角になるところはカバーする」
「うん!!」
早速、全体の把握ができる兄が私に指示を出す。昔、山で熊が出没してた頃の行き帰りを思い出す。よくこの連携を兄と取ってたっけ? 思い出に浸っていると、視界の端で少し離れたところの木々が妙な動きを見せた。それは速い動きでこちらへ向かってくる。
「………左の方向。影は…2つ!!!! 近づいてくる!!!!」
「分かった!! そっちは兄ちゃんが………幸子!! 右からも何か来るぞ!!」
私は慌てて右を見る。すると、そちらからも凄い勢いで接近してくる影が。左の2体に気を取られすぎた!! 私は兄のように全体を見るということができていなかったようだ。
「私が左2体を倒すから、お兄ちゃんはそっちお願い!!!!!!」
すぐ傍の木々が揺れ、私は早口でそう言うと刀を抜いて走り出した。兄も刀を抜いて、戦闘態勢に入る。
「分かった!!!!」
私は体中に力を入れる。ひゅぅぅぅ…2つの呼吸音が辺りに響き渡る。
「「水の呼吸…肆ノ型 打ち潮!!!!」」
私達は全く同じ技を出し、そして鬼の首は4体同時に地に落ちたのだった。