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鬼滅隊の兄と、鬼の姉

第7章 山ほどの手が


最終選別が行われる藤襲山。その道中、私は兄と手を繋いである時は歌いながら、またある時は他愛もない話をしながら歩いた。

「最終選別って何するんだろうね」

「そうだなぁ。危ないことをしないといいけどな」

と、偶に目的地である最終選別の話をしながら、私達はのんびりと向かっていた。

「そういえば、幸子は鬼殺隊にいた時、最終選別には行かなかったのか?」

ふと、兄が首をかしげながら私に問いた。私は頷きながら答える。

「うん。その時の最終選別には間に合わなかったの。呼吸がやっと使いものになったくらいだったから」

「そうか。呼吸はその時学んだんだな。錆兎も幸子は呼吸は身についていると言っていたから。そんな小さい頃から使えるようになっていたんだな。本当、幸子は凄いな」

ニコッと笑いながら私の頭を撫でる兄。私はそんな兄に首を振った。そんな褒められるようなものではないからだ。

「ううん。凄いのは私に呼吸を教えてくれた人達だよ。小さすぎて名前も顔も覚えてないけど…一生懸命教えてくれたおかげで今も使えるんだもん」

そして、本当の中に1つ嘘を交える。本当は顔も名前も全員はっきりと覚えている。親方様の命で私を置いてくれたこと、私を炎柱の継子にしたかったこと、そのために私を鍛えたこと、そして柱であったがために…私を家に置いたことで殺されてしまったこと。全て昨日の出来事のように鮮明に浮かぶ。全部忘れないでおくことが…私が唯一できる償いでもあるのだ。だけど、この優しい兄はそれを知っても尚私の罪も一緒に背負おうとしてくれるだろう。だから、これらは言う必要ないのだ。兄は被害者なのだから。私の罪を被害者の兄が背負う…なんとも奇妙な光景にならないために…。

「………幸子は優しいな…」

兄が私の頭を優しく撫でる。察しの良い兄に何か悟られる前に、私は前を指さした。その先には私たちと同じくらいの子供たちが次々と山の中へと入っていく。

「あ! 見て!! あそこじゃない?」

それは紫色の花々が咲き誇る、神秘な雰囲気の山だった。
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