第7章 山ほどの手が
「幸子!」
目の前の景色が信じられず、私はしばらくその場に座り込んでいると、突然後ろから勢いよく抱きしめられた。……顔を見なくても分かる。半年ぶりの声とその温かさに、私は思わず後ろを振り返りその人物を抱きしめ返した。
「よく頑張ったな!! 偉いぞ!!!!」
私の頭をこれでもかというくらいにぐちゃくちゃにする兄に、私は零れんばかりの笑顔を向ける。張り詰めていたものがゆっくりと解かれていく感覚がし、だんだん嗚咽が漏れる。あれが幻影だったのかは定かではないが、兄も岩を無事斬ることができたようだ。兄の後ろに鱗滝さんが立っていた。
「…お前達を最終選別に行かせるつもりはなかった。もう子供が死ぬのを見たくなかった。お前達には斬れないと思っていたのに……」
鱗滝さんは私たちを包み込むように抱きしめた。
「よく頑張った。炭治郎、幸子。お前達は凄い子だ」
鱗滝さんの優しい鼓動が体の中で響き、今度は兄の瞳から涙が零れる。
「"最終選別"必ず生きて戻れ。儂も禰豆子も此処で待っている」
兄が鱗滝さんの言葉でポロポロと泣き、私はわんわん声を出して泣いた。そして、私達はとうとう最終選別へと行く許可を貰えたのだった。