第5章 炭治郎日記 前編
「謝ること? 幸子が謝ることなんてないだろ? 」
俺がそう尋ねると、幸子は起き上がって俺の顔を見る。幸子は故郷から離れたあと、時折このような泣きそうな顔で俺を見つめることがあった。最初は心細いのかと思い、元気づけることをしていたが、そうすると笑顔をみせるのだが、悲しみの匂いはより一層強くなるのだ。
「………幸子。言いたくなかったら言わなくていいんだ」
俺の言葉に幸子は首を振り俯く。そして、意を決したように口を開いた。
「お兄ちゃんたちが家族を失って、お姉ちゃんが鬼になってしまったのは……全部私のせいなの」
…………幸子のせい? 俺は首を振った。
「違うぞ!! あれが幸子のせいなものか!! 自分を責める必要なんて…」
「私のせいなの!!!!!!」
幸子はそう言うとポロポロと涙を零す。嗚咽を上げながら、幸子は言った。
「お兄ちゃんたちの家族を殺して、お姉ちゃんを鬼にしたのは…鬼舞辻無惨。私の……ち、父親だった男なの……」
そして、俺は幸子が俺達と一緒に暮らすまでのことをぽつぽつと話し始めた。