第5章 炭治郎日記 前編
~炭治郎~
「…兄ちゃんは、幸子に幸せになって欲しいと思ってるんだ」
俺達は1年ぶりに禰豆子を挟んで3人で一緒の布団に入った。久々の温かさに思わず笑みが浮かび、俺はそう幸子に切り出した。幸子は俺の言葉に無言で視線を向ける。
「今後、好きな人たちと暮らして、結婚して、家族を持つこともあるだろう。幸子は遠い村から求婚を申し込まれるほどの美人だからな。幸子が幸せなら…俺も禰豆子も…血塗られた道でも生きていけるんだよ」
そう思って、俺は幸子を遠ざけようとしてた。おれは長男だから。兄弟の幸せを願うのは当たり前だから。だが、幸子はそう思わなかったらしい。
「………でも、幸子はそれは嫌だったんだな」
ごめんな…そう俺は謝った。幸子はコクンっと頷く。
「……駄目な兄ちゃんで…ごめんな……ムグッ」
俺は幸子によって口を塞がれた。幸子は大きく首を振る。
「駄目なんかじゃない!! お兄ちゃんは…駄目なんかじゃ……!!!!」
幸子の言葉に俺は笑みが零れる。この2番目の妹は、俺をいつも良い兄でいさせてくれることを思い出す。禰豆子は俺と対等でいようとしてくれていた。この2人の妹たちに俺は支えられてばかりだった。
「………ありがとうな幸子」
そしてごめんな。お前を光の道に導くのが長男としての俺の役目なのだろうが……俺は……
「お兄ちゃん…」
幸子がそう切り出し、俺は微笑んだ。なんだ?そう言葉をかけようとしたが、ふと幸子から悲しい匂いがする。俺は思わず起き上がった。
「……私ね、謝らないといけないことがあるの」