第2章 残酷
私の名前は、竈門幸子。竈門家の次女であり、炭十郎と葵枝の娘。兄妹は私の他に、4人の弟妹と、長男炭治郎と長女の禰豆子がいる。
「お父ちゃぁぁん!!」
一番下の六太の泣き叫ぶ声がここまで聞こえ、仕度をしている私の手が止まった。父炭十郎は、長年持病を患っており、つい最近他界してしまった。そのため、特にまだ幼い六太は寂しくてしょうがないのだろう。……お父さん。父の最期が頭を過ぎる。
「……幸子姉?」
不意に誰かが私の腰に抱きついてきた。誰かなんて見なくてもわかり、私はその震える体を抱きしめた。
「どうしたの?茂」
下の弟、茂。やんちゃでいつも明るいこの子も、六太の鳴き声につられてしまったのだろう。それか、怖い夢でも見たのだろうか。震える体に、私はそっと着ていた上着を掛けた。
「怖い夢でも見たの? 大丈夫だよ茂。もう怖くない」
そう背中をさすると、少し落ち着いたのか、泣きそうな顔を少し上げた。私は彼の体を抱き抱えた。
「…………お姉ちゃん…」
「ん?」
鼻をすする茂に私は笑いかけた。すると、茂は今度は不安そうな顔で私を見つめる。
「父ちゃんみたいに、どこにも行かないよね?」
どこにも……か。不意に頭の中にここに来た時のことが浮かんだ。