第3章 見知らぬ誰か
「ど、どうしたら止めを刺せますか?」
天狗の面…この人…足音も気配もなかった。私は姉の手を無意識に握った。
「人に聞くな。自分の頭で考えられないのか」
お面の人はそう兄に言い放った。兄は迷いを見せながら、近くの大きな石を手に取る。頭を潰すつもりなのか…。私は姉の手を引き、お堂へと戻った。もうすぐ夜があける。兄の優しさが決断するのが先か、それとも太陽に当てられて鬼が死ぬのが先か…。私は姉が入った籠を背負い外へと出た。
「……あの人…」
天狗の面の人は殺された人達を埋葬する最中だった。私はそれを手伝い穴を掘る。
「……あの…」
最後に手を合わせていると、兄がお面の人に声をかける。振り返ると、鬼は塵となって消えていた。
「儂は鱗滝左近次だ。義勇の紹介はお前で間違えないな」
兄を見る鱗滝さん。私と兄は互いに見合って頷いた。
「は、はい。竈門炭治郎といいます。こっちの妹は幸子で、籠の中にいるのは禰豆子で……」
「炭治郎。妹が人を喰った時お前はどうする」
鱗滝さんの言葉に詰まる兄。その兄を鱗滝さんは思いっきり引っ張叩いた。
「判断が遅い」
そして、鱗滝さんは兄に鬼である姉を連れ鬼殺隊になる覚悟を問いた。兄は頷き、私は兄と共に鱗滝さんの後ろをついて行くのだった。