第3章 見知らぬ誰か
「ぎゃっ!」
真っ二つに鬼の体だけが崖下へと落ちていく。これで、しばらく再生することはできないだろう…。
「……」
私はヘナヘナと地面に尻をつける。姉が私の頭を撫で、その後ろから兄が現れる。
「…禰豆子…幸子…二人とも無事で良かった」
ぎゅっと抱きしめてくれる温かさに、私はふぅっと息をはいた。この温かさのためなら、私は何でもするだろう。たとえ…鬼殺隊になって、あの男と再び対峙することになろうとも…。
「……この鬼…どうするの?」
私は小刀を取り出した兄にそう尋ねた。兄が小刀を握りしめながら私を見る。
「…家に残っていた匂いとは違う、別の鬼だ。でも、トドメをさしておかないとまた人を襲う。だから…俺がやらなきゃ」
私は斧を兄に見せた。小刀よりもこちらの方がいいだろう。
「…それは幸子が持っておいてくれ。何かあったらそれで禰豆子を守ってくれ」
私は頷き、空を見た。もうすぐ夜明けだ。そう思いながら、視線を兄へと戻すと兄の後ろに人が立っているのに気づいた。
「そんなものではトドメをさせん」