第3章 見知らぬ誰か
「んん? 妙な感じがするなぁ…」
血を滴らせながら、鬼はこちらに視線を向ける。私は思わず手斧を持った。
「お前ら人間か?」
そう言い終えるか否か、鬼が目にも止まらぬ速さでこちらへ牙を向く。
「お兄ちゃんっ!」
手斧を持った私の横を通り過ぎ、兄に覆い被さる鬼。私は焦るが、兄は冷静に斧で鬼の首元を斬っていた。しかし…
「傷が浅い…」
いや、そもそも普通の斧で鬼は殺せないのだ。朝日が登るまでまだ時間がある。私は走り出した。傷が治った鬼が兄に襲い掛かり、兄の手足を押さえつけたからだ。
「幸子っ!! 来るな!! お前は禰豆子を頼む!!」
兄の声で躊躇する体。しかし、鬼のニヤリと笑う顔で私は再び足を踏み出そうとした。
「来るなっ!! 俺は大丈夫だ!!」
「で、でも……お兄ちゃんっ!?」
その兄を強い力で押さえつけられる鬼。こちらをニヤリと見つめ、舌舐めずりをする。
「2度は殺られねぇよ。さぁ、頸を折るぞ。お前の次は妹だ」
これはさらに不味いと走り出すが、私の横を再び何かが通り過ぎた。その影の主は……
「お姉ちゃん!?」