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鬼滅隊の兄と、鬼の姉

第16章 私に向けられていた刺客と柱たち



胡蝶さんのお姉さん…前花柱の胡蝶カナエさんと言ったっけ。この屋敷の前の持ち主のことは、きよちゃんたちから聞いたことがあった。そして…彼女が既に鬼によって命を落としてしまっていることも。

「…姉は命を落とす間際も鬼に同情していました。人を喰い殺し、残された者の人生も大きく狂わせた鬼を可哀想? …私はそうは思えませんでした。でも、それが姉の想いなら妹の私が継がなければ……そう…思っていたのですが…」

再度彼女の瞳を見た時、私は思わず彼女を抱きしめてしまった。今の彼女は酷く疲れており、そしてとても小さかった。あの山で私達を助けてくれた彼女と同一人物と思えないほど…その姿は頼りないものだった。彼女は私の行動に酷く驚いたようで、腕の中で少し動いた。私は口を開いた。

「思います…!! 私も思いますよ!! 何故大切な人たちを奪った鬼に優しさを向けなければならないのか…何度も何度も何度も思いました!! 」

この人は、柱の立場で自身の思いとカナエさんの願いの間で葛藤し続けてきたのだ。自分の思いに背きながらも、鬼と仲良くなれるというカナエさんの願いを実現させようとしてきた。そんな中、鬼である姉と連れ添う私達が現れたことにより、今まで押し殺してきたものが自身に問いかけてきたのだろう。

私は姉の願いを叶えられるのか、と。

鬼に憎しみを向けない兄と私の姿に、胡蝶さんはカナエさんを重ねたのだろう。姉といるときに、時折見せていた彼女の憂いた表情から彼女の大きな苦悩の一部が見えたような気がした。自分は姉のように鬼を慈しむことができないという苦悩が…!! だけど、私が鬼に憎しみを向けられないのは…!! 閉じた瞼の裏にいたのは…優しい姉の姿だった。

「でも…でも私は…お姉ちゃんが鬼になってしまったから……鬼に憎しみだけを向けられない…それが理由です!!!! 貴方は間違っていないんです…そう思うのは……普通のことなんですよ…」

自分を否定してしまうことは、辛く…そして耐え難い苦しみだ。私は竈門幸子となり、その苦しみを受け入れることができたが…この人は長年自分の気持ちと折り合いをつけられずにいるのだ。私は彼女を強く抱き締めた。
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