第15章 蝶屋敷
「幸子さん!! 聞こえていますか!?」
いつの間にか胡蝶さんが、俺の前で幸子の様子を見てくれていた。俺の声を聞いて駆けつけてくれたのだろう…。何度読んでも反応のない幸子に、いつの間にか俺の目からは涙が溢れていた。俺の手から…幸子が離れて行くような感覚がする…
「負けるな幸子!!!!!!!!」
咄嗟に出た言葉に自分でも驚いたが、俺は両手で妹の手を握る。
「……頑張れ…負けるな…諦めるな…兄ちゃんが付いてるからな!! 幸子」
俺が諦めてどうする…!! 幸子だって頑張っているんだ!! 自分を鼓舞し、何度も何度もそう声をかけた。
「そうだぜ!!!! さっさと目を覚ませ!!!! そんでもって、俺様と勝負しやがれ!!!!!!」
「幸子ちゃん!! 頑張って…!! 君がいないなんて俺は耐えられないよォ!!!!!!」
伊之助も善逸も幸子の傍でそう声をかけてくれる。俺は何度も言葉に詰まりそうになったが、それでも口は動かした。
「頼む…頑張ってくれ…!! これ以上…俺を…俺たちを…ふたりぼっちになんて…してないでくれ…!!! 幸子!!!」
どれだけ長く声をかけ続けてきただろうか…。今日は特別にと…胡蝶さんがみんなでいることを許可してくれた。日が落ちると禰豆子を連れてきてくれて、俺たちは5人で夜を過ごした。
そして、夜が明けた。日の光が顔を照らすと、俺の脳裏には黒髪が良く似合う…もう1人の妹のことが過ぎり、慌てて身体を起こした。
「禰豆子っ!! ……え…」
鬼になった妹は大丈夫だろうかと顔を上げたのに、俺は頭が真っ白になった。俺の声で伊之助や善逸も目を擦りながら顔を上げて、そして驚愕する。
「炭治郎!? 幸子ちゃんがいないぞ!?!?!?!?」
俺の妹が…まるで太陽のように温かく照らしてくれる最愛の妹が…ベッドから姿を消していたのだ。