第15章 蝶屋敷
~炭治郎~
突然のことだった。なんの前触れもなく幸子が眠ったときと同じように、突然幸子の体温がなくなっていった。
「なんで…なんでこんなに冷たいんだ…幸子!!!!!!」
昨晩、俺は伊之助と共に幸子の病室にいた。幸子が眠り続けてから、俺たちはずっと傍にいた。まだ毒の抜けきっていない善逸はたまに来てくれたが、その度に幸子が変わらず眠っていることに安堵と不安のような顔を見せていた。
「………起きないな…幸子ちゃん…」
そう零す善逸に俺は何も言えなかった。目を離すところっと死んでしまいそうで……この世で禰豆子と2人だけの兄妹になってしまうようでずっと怖かったからだ。夜も眠れなかった。そんな時だった。つい、俺は幸子の手を握りながらついウトウトとしていた。うたた寝の夢は家族の夢だった。違う点があるとすればひとつだけ…
「お兄ちゃん!!」
笑顔の家族の中に…幸子の姿だけなかったことだ。俺は探した…あの雪色の髪の妹の姿を。そして見つけた。
「炭治郎…」
そちらへ走り出して、彼女の手をつかもうとした時、母の声が聞こえた。待ってくれ…もう少しで届きそうなんだ…そう母に言おうとした時……幸子が振り向き、母に変わった。
「炭治郎…起きて……お願い……」
母は泣いていた。母の細い指が俺の顔を包み込み、俺の額に自分の額を当てた。
「起きないと…幸子が死んでしまうわよ…あの子をお願い…炭治郎」
ガバッと夢の世界から目覚めた俺は勢いよく起き上がった。死ぬ…?幸子が死ぬ…!? ただの夢とは思えず、俺は幸子を見た。
「っ!? 幸子!! 頼む起きてくれ…幸子!」
そして、俺は何故寝てしまったのだと自分を叱った。恐れていたことが現実になってしまったことに今更気づいたからだ。幸子の顔色がまるで…死人のように…血の気がない。握っている手からもいつもの温かさを感じられなかった。