第15章 蝶屋敷
日の光が差し込み、すやすやと寝息をたてる姉の頭を私はそっと撫でた。運んでいる最中も、姉は私の手を離そうとせず、私の顔をぺたぺたと触っていた。
「……心配…かけちゃったね」
姉の寝顔にごめんねと謝ると、私は静かに箱の扉を閉める。すると、何やら廊下が騒がしいことに気づいた。
「……………幸子!?」
一番最初に現れたのは兄だった。兄は私の姿を見るなり、壁にもたれかかるようにして座り込んだ。続いて、伊之助や彼に抱えられている善逸さんが現れる。2人とも兄と同じような顔をして、私を見ていた。
「え…と……おはよう?」
何と声をかけていいのか分からず、そう口を開くと、途端に兄がわぁぁっと叫んだ。
「お前…なんでお前…寝ちゃうんだよ!!!! 兄ちゃん心配しただろうが!!!!!!」
そして、兄は膝をつきながら私の方にやってきて、私を強く抱き締めた。ボタボタと兄から流れる水滴が私の背中に染みる。
「禰豆子とお前じゃ…体の作りが違うんだから、眠ったってどうしようもないだろ!!!!」
と理不尽にもそんなことを言われてしまう。私はそんな兄に驚いてしまった。涙を流して怒られたことがなかったからだ。……心配をかけすぎてしまったようで、ごめんねと私は彼の背をそっと撫でる。すると、ガバッと私たちに突進してきた伊之助により、私は地面に倒れてしまった。
「おはようじゃねぇだろ…!! この…!!!!」
私の頭を拳で殴る伊之助。だが、全く痛くなくぺむぺむと音をたてる。そんな彼だが猪の被り物の下では兄と同じくらいの大粒の涙が零れていた。私はごめんと彼にも謝りながら、彼と一緒に泣いている善逸さんの頭もそっと撫でた。
「よかった…良かったよぉ。なぁ、炭治郎」
「……あ…あ…!! よかっ……た…!!!!」
私は強く抱き締める兄や伊之助、善逸さんにごめんと言い続けた。そして、ありがとう…とも。
「皆のおかげで戻ってこられたんだよ。ありがとう………ん?」
先程まで聞こえていたはずの音が聞こえなくなり、私は慌てて顔を上げ、そして叫んだ。
「え……だ、誰か!!!! 胡蝶さん!!!! アオイさぁん!!!!!!」
力尽きた3人は意識がなくなっており、私の上で爆睡していたのだった。