第2章 残酷
「……あぁ、そう言えば忘れていたよ」
ドサッという音がし、私は解放された。私が咳き込んでいる間に、男はスタスタと外へと歩いた。
「お前と話していると、時間を忘れるよ。久々に楽しい時間だった」
……どの口が言うのだろう…。私はきっと睨んだ。男は外でうつ伏せで倒れているお姉ちゃんと六太のそばに立っていた。
「な…なにを……」
生きたまま彼らの体を貪り食い、死してもなおその体を弄ぼうというのか…。しかし、男はにこやかな笑みを浮かべたままだった。
「私の愛する娘よ。また逢える日を楽しみにしてるよ」
これは私からのプレゼントだ…そう言う姿が、次第にぼやけてきた。……ダメだ……。意識が……飛ぶ…。プレゼント?一体なんの…
「それは、見てからのお楽しみだ」
「ま……て……鬼舞辻……無……惨」
「私の名を覚えていてくれたのかい? 嬉しいよ。じゃあね、魅子」
あぁ……ダメだ……もう……………。
最後に目に浮かんだのは、大好きな家族の笑顔だった。