第15章 蝶屋敷
「弱虫太郎が泣きべそかいてんじゃねぇぞ!!!!」
「……!?」
突然、俺の目の前に飛び立つ影。それは、久々に聞く伊之助の強気な口調だった。伊之助は俺の服をがっしりと掴む。
「あいつはそんな簡単に死ぬような奴じゃねぇ!! お前が信じてやらなくてどうするんだ!! お前、あいつの兄貴だろうが!!!!!!」
そのまま俺を前後に力いっぱい振る伊之助。しかし、俺はハッとした。その自信ある口調とは裏腹に、俺を掴む拳は震え、その身体からは恐怖の匂いがしたのだ。拳の震えは段々身体へと移っていく。
「あいつは!! 俺様が見てきた中でメスの中で1番強ぇ!! だからあいつが起きるまで、俺様は修行してあいつよりも強くなってやる……」
「ちょっと!! 怪我人は、大人しくして下さい!!!!!!」
伊之助の言葉を遮り、アオイさんが病室に顔を覗かせた。伊之助はビクッと身体を震わせ、俺を掴んでいた拳を離す。…
先程まで慌ただしく幸子についていたアオイさんが…ここにいるということは……
「ア、アオイさん……妹は……!!!!」
「………熱はまだ続いていますが、とりあえず様子見ということになりました。面会されますか?」
俺と伊之助は顔を見合わせ、まだ歩けそうにない善逸を連れて、幸子の病室へと向かったのだった。