第15章 蝶屋敷
「炭治郎!! 幸子ちゃんは!?」
病室に戻ると、心配してくれた善逸が俺に声をかける。俺は分からない…そう口を開いた。
「ただ…胡蝶さんの話によれば…ここ数日が山場らしい」
俺の言葉に目を開く善逸。すると、那田蜘蛛山でのことがきっかけで自信を無くしてしまった伊之助が、こちらを見て口を開いた。ここに来て数日、ほとんど話さなかった伊之助。しかし、それでなくともいつも強気な口調の伊之助からは想像できないほど、震えた声を発した。
「………あいつ……死ぬのか…?」
「お、おい!! 止めろよ!! そうと決まったわけじゃないだろ!!!! 幸子ちゃんは大丈夫だ……なぁ、炭治郎!!!!」
俺を見る二人。その瞳は俺に大丈夫だと懇願しているかのよう。……2人の希望に沿うことができず、俺は俯いた。
「…もし、ここで回復したとしても……胡蝶さんが言うことには25歳まで生きられないらしい」
「…………ウソだっ…!! なぁ!! ウソだろ!?
なんで…なんで幸子ちゃんが……炭治郎!!!!」
俺は善逸の言葉に何も返せないでいた。俺だって嘘だと思いたかった。だが、現実幸子は高い熱を出し眠ったままだ。
「………分からない…」
「え?」
「分からないんだ…善逸…。禰豆子に続いて…幸子も…俺はどうしたら……」
「炭治郎…」
身体の震えが止まらなかった。最悪の未来を想像する度、俺の中では恐怖が支配していく。怖い…怖いんだ。家族を失くしてからずっと3人で支え合ってきた。俺は長男だから禰豆子や幸子を守ろうと頑張ってきたし、禰豆子や幸子はそんな俺を支えてくれていた。今更、この世で二人きりの兄妹になんてなれるものか…!! 俺たちは三人でずっと支え合ってきたんだから。