第15章 蝶屋敷
鬼舞辻無惨が最初に放った追っ手…その鬼の言葉がふと頭を過ぎった。
「魅子はどこじゃ? 隠しても無駄じゃぞ? あの方がご所望されておるからのぉ。太陽を克服するためにな」
いつの間にか、怒りで体が震えていた。鬼舞辻無惨、あいつは…人をなんだと思っている!! 自分の望みのためなら人の運命を捻じ曲げてもいいのか!! 幼き頃、目を瞑るのが恐ろしいと言っていた幸子…。あんな小さな体の子が暗闇が怖いと震え続けるまで…あいつは一体何をしたのだ…。幸子に行った仕打ちを考えただけでも怒りで頭がどうにかなりそうだった。
「……炭治郎君。那田蜘蛛山で、私は幸子さんの怪我の程度を鎹烏から報告を受けていました。しかし、柱合会議で彼女と会った時、驚きました。彼女は折れていたはずの足で雷の呼吸を使っていたからです」
……それは俺も不思議に思っていた。那田蜘蛛山で、胡蝶さんから逃げる際……幸子は普通に禰豆子を抱えて走っていたから。怪我の程度は匂いで把握していたため、変わると言ったのだが……
「私はこうも予想しているのです。彼女は下級の鬼よりも多く鬼舞辻の血を与えられており、そのため治癒力も高い。しかし、彼女自身の稀血は鬼としての変化を留めている。よって、彼女は人でありながら、鬼同様の治癒力を手にしているのだと」
俺は納得した。しかし、疑問がひとつ浮かんだ。
「それなら…それなら、何故幸子は目を覚まさないのでしょうか? しかも、高い熱をだしている。禰豆子の時は………っ!!」
治癒力が高いならば、幸子が何故高い熱を出し、眠り続けているのかが分からない。俺の質問に胡蝶さんはふぅっと息を吐く。胡蝶さんの様子に俺はすぐに気づく。鬼の禰豆子が眠り続けた時と、人間のまま鬼に近づいている幸子との大きな違いに。
「……そうですね。人間が鬼の無制限の治癒力に耐えられるはずがないんです。いつかそれに支障が出る日がやってくる…。これは……あくまで予測の範囲ですが……」
俺は呆然と胡蝶さんの言葉を聞いていた。もう…涙も出なかった。
「幸子さんは…25歳まで生きることはできないと思っていてください」