第15章 蝶屋敷
胡蝶さんの検診が終わり、血を数本抜き取られたあと、私がのんびりと外を眺めていると、
「こんにちは!! 幸子さん」
と、可愛らしい三人組が現れた。彼女たちは私が暇をしているだろうと、たまに顔を出してくれるいい子たち。
「こんにちは。なほちゃん、きよちゃん、すみちゃん」
他の仕事があるだろうに、笑顔で私のベッドに寄って来てくれる三人。今日は折り紙を持ってきてくれたようだ。彼女たちの要望通り、私が鶴の作り方を教えてあげていると……
「こら!! 仕事はどうしたの!!」
アオイさんが大きな洗濯カゴを持って、そう三人に注意をする。仕事の合間を縫って来てくれていたようで、私は申し訳なく思った。
「私たち、千羽鶴を作りたくて…ごめんなさい!!!!」
なほちゃんたちがいうことには、怪我で落ち込んでいる隊員さんたちがいるようで、その人たちに折り鶴をあげて元気になってもらいたいのだそう。聞けばその隊員たちの多くは…鬼の毒で後遺症が残る人達なのだと。
「……そう。でも、今日の仕事はちゃんとすること!! いいわね?」
アオイさんもそれ以上強くは言えなかったようで、ふぅっと息を吐くと自分の仕事へ戻ろうとした。その後ろ姿を私は呼び止めた。
「アオイさん!! あの、あの時は我儘を言ってしまい本当にすみませんでした!!!!」
「……いえ。それが仕事ですから」
アオイさんはそれだけ言うと振り返らずスタスタと早足で言ってしまう。やはり腹が立っているのだろうか…迷惑をかけてしまったな…そう私が項垂れていると、クスクスときよちゃんが笑った。そして、三人が顔を見合わせ、コソコソ話をするように口に手を当てた。
「アオイさんはですね。幸子さんが持っていらっしゃった箱を、夜に直してくださっているんです」
「それで、ひとつひとつ凄く丁寧に直されているので、何故かと聞いたんですよ」
「そしたら、この箱は幸子さんがこの世の何よりも大切だと思っているお姉さんが入っている箱だからっておっしゃっていたんですよ」
本当に素直じゃないんですよねアオイさんは!! そう声を揃える三人に、私は優しく頭を撫で、そして三人にありがとうとお礼を言った。そして、次にアオイさんにあった際は、ごめんなさいではなくありがとうと伝えよう…そう思ったのだった。