第15章 蝶屋敷
「あらあら。幸子さんにため息なんて似合いませんよ。いいじゃないですか。あなたが隊員たちを救ったという証です。それに、隊員たちの士気も上がりますし」
そのため息を"かぐやの君"のことだと思ったらしく、胡蝶さんはにこやかにそう声をかけたので、私は首を振る。
「そんな…その鬼を倒したのは私ではなく、胡蝶さんだって話じゃないですか。それに、胡蝶さんは鬼の毒を調和する薬も作ってますし…今回賞賛されるべきなのは胡蝶さんですよ」
そう…今回那田蜘蛛山での胡蝶さんの活躍がなかったら、助かる命も助からなかった。確かに、強い鬼を二人倒したのは冨岡さんだったが、あの山で最も人の命を救ったのはこの人と言える。まぁ、薬学に精通している胡蝶さんを、那田蜘蛛山に向かわせたお館様の采配は流石の判断だったということにはなるが。
「私は柱ですから」
私の言葉にふふっと笑う胡蝶さん。大人だなぁ…と私と5歳しか違わないはずのこの人が柱に身を置いている苦悩も知らず…私はそう呑気に思っていたのだった。