第14章 鬼殺隊柱合裁判
「では手紙を」
………手紙? お館様は一通の手紙を読むように、近くに控えていた子にそう言った。すると、長い用紙を取り出したその子は説明をするように口を開いた。取り出す際に見えたその用紙には……見覚えのある達筆な字が書かれていた。
「こちらの手紙は元柱である鱗滝左近次様から頂いたものです。一部抜粋して読み上げます。
"──炭治郎と幸子が鬼の兄妹と共にあることをどうか御許しください。禰豆子は強靭な精神力で人としての理性を保っています。また、幸子も兄や姉と共に、鬼殺隊として父…鬼舞辻無惨を殺す覚悟も出来ております。私は彼らを信じたい…そう思うのです。もしも、禰豆子が人に襲いかかる…または幸子が鬼側につき人が死んだ場合は、竈門炭治郎、竈門幸子及び……鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します"」
その手紙の言葉に私は目を見開いた。冨岡さんを見ると、冨岡さんからは何の感情も伺うことができなかった。兄を見ると兄も私を見ていた。ひとつ…またひとつと涙が零れ落ちる。鱗滝さん……冨岡さん……!! 私達は…優しい人に支えられているのだと実感する。
「……切腹するからなんだと言うのだ。死にたいならかってに死に腐れよ。なんの保証にもなりはしません」
「ならば、俺の首もかけよう」
煉獄さんがそう不死川さんに言う。私は思わず彼の服を掴んだ。炎柱であるあなたの家系は…もうあなたとその弟さんだけだ。煉獄さんがもしいなくなれば、血が途絶えることになりかねない。貴方が命をかけることは……。しかし、私は煉獄さんが私に向けた微笑みで何も言えなくなった。この人は…私を自分の命を賭けてまで信頼してくれている…。その期待に応えろ…そう言っているようだった。
「ありがとう杏寿郎。これで、禰豆子や幸子のために、三人の者の命がかけられていることになった。これを否定する側もそれ以上のものを差し出さなければならない」
「………っ!!」
「それに炭治郎は鬼舞辻と遭遇している」
お館様のその一言で場が混乱し、前もって知らされていた胡蝶さんと煉獄さん以外の柱が兄に詰め寄る事態となった。