第14章 鬼殺隊柱合裁判
突然現れた顔の傷が目立つ男性。その男性の登場に私は体を震わせた。何故なら、その人は飄々とした口ぶりとは裏腹に…今にも殺すという殺気を私に向けたからだ。その人は怒りを露わにした足音でこちらへとやって来た。
「一体全体どういうつもりだァ? のうのうと生きてやがった鬼舞辻の娘が何故ここにいる? さっさとくたばっちまえばよかったのによォ。どうせすぐに裏切って俺たちを惨殺する魂胆なんだろォ。 鬼を送り込んだのも計画のうちってか? さっさと居場所を聞き出し殺して……」
「幸子はそんなことしない!! するもんか!!!!!!」
兄の声が顔に傷がある男の声をかき消した。兄は怒りに満ちた瞳で、傷の男を見る。
「幸子の何を知っている!! 幸子は家族を助けるために自ら苦境に身を置いた優しい子だ!! そんな子に死ねばよかったなどと……幸子に俺の家族に二度とそんな言葉を言うな!!!! 柱だか何だか知らないが、俺の家族を傷つけるのを俺は絶対に許さない!!」
「………お兄ちゃん…」
普段は温厚な兄が、初対面の人にそのように怒りを露わにしたところを見るなんて、初めてのことだった。傷の男性は兄を見て、舌打ちをした。そして、見覚えのある大きな箱を軽く動かした。
「っ!?!?!?」
私の腕の中にあったはずの姉の入った箱が……いつの間にか傷だらけの柱の手の中にあった。………見えなかった。視覚も触感も…取られたことに気づかなかった…!! 私は唇を噛む。だが、下手に動くのも得策じゃない…。私は黙って様子を伺うことしかできなかった。
「不死川さん。勝手なことをしないでください」
胡蝶さんが少し怒りを露わにした様子で、不死川という柱を窘めたが、彼はそんなこと気にもしないで兄に向かって口を開いた。
「さっき鬼が何だって言ってたな坊主ゥ。鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ? そんなことはなァ 」
ニヤッと笑みを浮かべる不死川さんに私は嫌な予感が過ぎる。止めに入ろうと体を動かすが……
「動かんぞ」
「っ!」
煉獄さんが私にそう言うように、私の体は腕を動かすことも足を動かすこともできないように…煉獄さんによって抱えられていたのだった。