第2章 残酷
「う……」
酷い頭痛を感じ、私はぼんやりと意識を取り戻した。…………なにか……音がする……なに……
ぐちゃぐちゃ……ぐちょぐちょ……
「目が覚めたか」
私の髪を優しく触る誰か。………お兄ちゃん?ぼーっとする頭で、私は体を起こそうと腕に力を込めた。
「まだ動かない方がいい。頭を強く打ったからな」
………頭? なんで頭を強く………っ!?!?
「し…茂!!」
なんで……なんで私はこんな状況で気を失っていたのだろう…。鬼が無力な家族に襲いかかろうとしてたのに……。目の前の茂は、鬼に食われている最中で……その目にはすでに光を灯していなかった。
「お……お母さん……」
母の姿を探し、そしてまた絶望した。母は花子を自分の背中に庇いながら、絶命していた。後ろの花子もまた、口から血を垂らして目をつぶっている。泣きもせず、怯えもせずに。
「あ………お…お姉ちゃん? 六太………」
「死んだよ」
その冷たい声に背筋が凍った。私は恐る恐る顔を上げた。
「お前のおかげで、質の良い若い肉が手に入ったよ」
私は憎悪の目を向けた。こいつ……こいつは……私から何もかも奪うつもりなのか。
「お前は本当に勇敢だな。流石、鬼狩りに一時期いただけはあるよ。だけど、お前も知らないことがあるということも覚えていたがいい。……ほら、もうそろそろだ」
私は男が指さす方向をちらりと見て、そして後悔した。そこには、茂と竹雄を両手に貪り食っている鬼の姿があったから。……悔しい。ただ見てる事しか出来ない。体が…体が動けば……
「…………ぐ…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
しかし、突然、突然鬼の体が爆発した。茂と竹雄が力なく地面に落ちる。
「残念だ。有望な子だったのに。だがまぁ…その程度だったということだろう」
男は淡々とそう言い、そして言葉を続けた。