第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
ドス…。累が消えた跡をぼんやりと見つめていた私は、富岡さんの影に気づかなかった。富岡さんは私達を見て、何かを思ったのか…累が消えた後残った服を踏みつけた。
「人を喰った鬼に情けをかけるな。子どもの姿をしていても関係ない」
そう富岡さんは兄にそう言った。兄はそんな富岡さんの言葉に精一杯首を振る。
「鬼は人間だったんだから……俺と同じ人間だったんだから。足をどけてください。鬼は虚しく悲しい生き物だ」
富岡さんは兄を見て、姉へと視線をやり、そして最後に私の顔を見た。富岡さんは再び兄の顔へと視線を戻し、何かを思い出したかのように口を開く。
「お前は………」
そしてそう言いかけた後、バッと正面を向いた。私も視線を向ける。何かが……急接近してくる!!
ガキュインッ!!!!
衝撃と衝撃がぶつかったような音がした。
その急接近した影はふわりと宙を舞い、富岡さんに声をかける。
「あら? どうして邪魔するんです富岡さん」
私はようやくその影の主を確認して、姉が斬られてしまう所だったと悟った。
「鬼とは仲良くできないって言ってたくせに何なんでしょうか。そんなんだからみんなに嫌われるんですよ」
ムッとしたような視線を富岡さんに向けたその人は、蟲柱の胡蝶しのぶさんその人だったのだ。