第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
ピクっと父の肩が動いた。そして、私を強く抱きしめてくれる。
「そうか…。ありがとう幸子。みんなも幸子と家族になれて…幸せだったよ」
父の言葉でボロっと涙が零れた。外を見れば、母も弟たちも妹も私に笑顔を向けてくれていた。
「…幸子、お前にヒノカミ神楽をきちんと見せたのは、あれが最後だったな」
あれというのは、父が死んだ年の舞のことを言っているのだろう。それ以前は小さい弟や妹たちと一緒に温かい家で待っていたから。私が頷くと、父が私の背をポンポンと叩く。
「お前は目がいい。だから、炭治郎や禰豆子を助けてあげてくれ」
ヒノカミ神楽で…?私は戸惑いながらも頷く。
「やってみる!!」
私の言葉に父は安心したようにフッと笑った。
「…炭治郎も禰豆子も真っ直ぐすぎるところがあるから……どうか支えてあげてくれ」
私はくすくすと笑った。2人のそんな頑固なところは、絶対に父に似たのだ。私の笑い声に父は体を離した。
「………ヒノカミ神楽はどんな強靭な糸でさえ打ち切る…。今のお前ならできるだろう。できなければ…炭治郎と禰豆子まで死んでしまうことになる」
「え…」
私は父にトンっと肩を押される。最後に見た父の顔は涙で濡れていた。