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鬼滅隊の兄と、鬼の姉

第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~


夢を見た。父の夢だ。

「お兄ちゃん。お父ちゃんは何故、この雪空であんなに動けるの? 私はこんなにも手足が悴んで動けないでいるのに」

私の目線の先にはヒノカミ神楽を踊る父の姿がある。兄はそんな私に自分のマフラーを巻きながら答えた。

「兄ちゃんも同じことを聞いたことがあるんだ。呼吸の仕方…って言ってたかなぁ」
「ふぅん。お父ちゃん…無理してないかな?」

そう聞くと、お兄ちゃんは私の頭をそっと撫でた。多分兄は知っていたのだろう…父がもう永くないことを。

「あっ!! 終わったよ!!」

茂や六太、それに花子がフラフラとこちらに歩く父に駆け寄った。

「……あっ!? 待って!! お父ちゃん、疲れてるから……」
「幸子」

いきなり場面が変わり、私は父が寝ている布団の上にいた。隣には幼い兄もおりすやすやと寝ていた。

「幸子。炭治郎が風邪を引かないように衣をかけに来てくれたのか。ありがとう」

父が私を手招きするので、私は彼に駆け寄った。そして、兄に父の衣をかけると、擽ったそうに身をよじった。

「…この暮らしは居心地がいいかい?」

父は兄を撫でながらそう私に尋ねた。… そうだ…これは私が竈門幸子なってからひと月が経った時か。私は大きく頷いた。

「…そうか。贅沢も何もさせてあげられないが……お前がそう思ってくれているなら何よりだ」

私の頭をそっと撫でる父。あぁ……私が竈門幸子となれたことは…本当に幸運だなぁ。私が心地よい重みに体を預けていると、父はそっと私の小さな体を抱きしめた。

「お前が負った傷を癒してあげることができれば…と思ったのだが…すまない。その前に私の体が持たなかった。悲しい思いも辛い思いもたくさんさせたな」

「お父ちゃん…」

これは私の記憶にないことだ。顔を上げると、悲しそうに微笑む父の顔があった。私は首を振る。

「私は大丈夫だよ!! お兄ちゃんもお姉ちゃんもいるから!!」

「それに…いい仲間にも巡り会えたしな」

父の言葉に私は頷く。そして、私は父を強く抱きしめて口を開いた。最後まで言えなかったことを言いたかったから。

「お父ちゃん、ありがとう。 私ね、お父ちゃんとお母ちゃんの子供になれて…お兄ちゃんやお姉ちゃんの妹になれて…竹雄や茂、花子や六太の姉になれて…幸せだよ!!!!」


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