第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
恐らく、兄たちは東側にいる。私達はいつの間にか兄たちと同じ方へ進んでいるつもりでいたがどうやら西側へと回ってしまっていたようだ。
「山の木々で視界が悪い上に…ここには音がたくさん流れているからな…」
たとえ、兄がいたとしても刺激臭で鼻がやられていたため、合流するのは不可能だっただろう。
「…炎の呼吸…漆ノ型 盛炎のうねり」
私は多くある繭に向かって技を繰り出した。炎に斬られるとたちまち他の繭にも炎が移る。
「ゴホッ!? お…おれ…生きて……」
繭の中には人がいた。しかし、いない時もあった。その場合、刀ともに液体が出てきた。それを見て、私はなるべくまだ助かる人がいる繭を斬るようにした。今回はまだ繭になったばかりの人達が多く、10ほどある繭から人が出てきた。
「これを!! 藤の花です。残り少ないので、なるべく固まっていて下さい。私は東に行きますから!!」
そして、私は勢いよく地面を蹴る。東へ東へ行くにつれ、この山で最も強い存在を感じていた。悪いものだ。
「……累…」
「呼んだ?」
真上から声が響き、私は咄嗟に刀を構えた。そんな私に糸が数本襲いかかる。
「…………ふぅん…昔はこうしたら、すぐ大人しくなったのに…」
パラパラと斬れた糸が地面に落ちる。それを感情のない瞳で見て、そして首を傾げた。
「まさかとは思ったけど、やっぱりお前だったんだ魅子。無惨様が場所を把握出来ないって心配していたよ」
そして、トンっと地に下りると、その鬼は…累は微笑んだ。
「まさか鬼狩りになってるなんてね。無惨様から見つけたら少し躾けるように言われているんだよね。姉弟として心苦しいけど……まぁいっか。魅子、またあの時みたいに…ごっこ遊びしようか?」