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鬼滅隊の兄と、鬼の姉

第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~


嘘だ…。私はそう彼が言った時すぐにそう思った。大丈夫な訳が無い。鬼の毒で吐血しているし、汗が尋常ではないくらいに出ている。体中が痛むのだろう…。それでも、善逸さんは無理に笑って私を行かせようとする。

「……炭治郎が心配…なんでしょ? あいつだって……君の力が必要な…はず…だから…」

呼吸もろくに出来ていない…それでも善逸さんは唇をぎゅっと噛みながら…痛みに耐えながら…泣かないように私にそう言った。

「…………分かった。ありがとう…」

私がそう頷くと、善逸さんはニコッと微笑み、目を閉じた。目を閉じる彼に私は言った。

「鎹烏と雀ちゃんの姿がない。きっと助けを呼びに行ってくれてる!! 諦めないで!! 呼吸を使って毒の周りを遅めて!! いい? 絶対に諦めちゃダメだからね!!!!」

そして、私は体が冷えないように彼に自分の上着を被せる。上着には藤の花が数個入っている。これで、他の鬼避けくらいにはなるだろう。

「絶対に…絶対に返しに来て!!」

そして、私は小屋から飛び降り、田山さんの方へ走っていく。

「田山さん!! すみません、先に行きます!!」

田山さんは朦朧とする意識で私を見る。私は彼の上着から1輪の花が見えているのに気づく。

「私があげた藤の花……まだ持っていて下さったんですね」

もうそれはくしゃくしゃになっていて、匂いもないので鬼避けの効果は発揮されないだろうが…。私はその花の隣に新たな藤の花を置いた。

「……頑張ってください。助けは来ますから。呼吸を使って毒の回りを抑えて…」

私はほかの人たちにも藤の花を上げると、走り出した。小屋から見た瞬間……東側で大きな戦闘を見かけた。

「……お兄ちゃん……伊之助……気をつけて…」

この山には十二鬼月がいる。
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