第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
~善逸~
最初に君を見た時、とても温かい音がすると思ったんだ。俺がどれだけ泣き叫んでも見放したりせず、俺を励ましてくれる。後で炭治郎が兄だと知った時には驚いた。だって、全然容姿似てないし。でも、見た目は全然似てなくても、音は似てるんだなって思った。炭治郎は泣きたくなるほど優しい音がするし、幸子ちゃんはとても心地良い音がしてなんだかほっとするから。だから、こんな心地よい音をもつ彼女を……絶対に悲しい音にさせちゃいけない…そう思うんだ。
「…雷の呼吸…壱ノ型 霹靂一閃 六連」
夢を見るんだ。幸せな夢。俺は強くて…誰よりも強くて…弱い人や困っている人を助けてあげられる…。じいちゃんが教えてくれた時間は無駄じゃなかったんだって。
「善逸さん!」
夢の中で、幸子ちゃんの音が何かを決意するような音がしたような気がした。それはとても悲しい音で…俺は何とかしなきゃって思ったんだ。俺のために……助けられる仲間を殺しちゃうなんてこと、絶対に優しい君にはさせたくない…そう思うから。兄妹思いの優しくて、温かくて、可愛いのに強くて…そんな君にずっと俺は励ましてもらっていて………
「………だから…行って…。幸子ちゃん」
俺みたいに君を必要としてる奴なんてたくさんいるだろうからさ…。俺は小屋に叩きつけられる前に俺を支えに来てくれた…綺麗な青の瞳を涙でいっぱいにする幸子ちゃんにそう言った。
「俺は……大丈夫だから…」