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鬼滅隊の兄と、鬼の姉

第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~


「くふっ。そんなこと言っても、お前はもう負けてるんだよ。手を見てみな」

「はぁ!? 手!? 手が何さ!!」

善逸さんが自分の左手を見て驚く。彼の左手は、何かに噛まれたような跡を中心にして、紫色が広がるように侵食していた。

「毒だよ。咬まれたろ? 蜘蛛に。お前もそこの奴も蜘蛛になる毒だ」

鬼は笑いだした。ニヤニヤと下卑たる笑みを浮かべて…

「四半刻後には俺の奴隷となって地を這うんだ……」

「ギャァァァァァァァッギャーーーッ」

善逸さんの糸が切れ、田山さんを木のそばにそっと置くと走り出した。

「逃げても…」
「無駄ねハイハイハイ!! わギャッてんだよ!! 分かってんの!!」

そして、見事に大きく育った木へと4歩で飛び乗った。幹にしがみつき、太い枝の上でしくしくとすすり泣く善逸さんを見て、鬼は笑った。

「ハハハハ!! 何してるんだお前」
「うるせーーよ!! うるせぇ!!」

私は我慢できなくなり、叫んだ。四半刻後ならばまだ田山さんと下山する余裕はある。鎹烏に頼んで鬼の毒に詳しい人を連れてきてもらえば……

「善逸さん!! 下山して!! この鬼は私をすぐに殺したり蜘蛛にしたりしないみたいだから!! だから……」
「ごめんっ!!!! ごめんね幸子ちゃん!!!!」

彼が涙をボロボロ落としながら、私の言葉を遮った。そして、もう一度謝ると、善逸さんは口を開いた。

「俺…足でまといだ!! 俺がいなかったら、君はあの鬼が吐いた毒を難なく避けて、次の攻撃で首を斬ることが出来た。俺を気遣ったせいで君は君は今囚われの身だ!!」

それは違う!! 私が捕まったのは私が判断を間違えたからだ。善逸さんは関係ない。しかし、善逸さんは大きく首を振った。

「そもそも炭治郎達と一緒に行っていればこんなことにはならなかった!! 俺のせいだ!! ごめんよォォ!!!!」

えぐえぐと嗚咽を上げて泣く善逸さん。私はもう一度違うと声を張り上げた。そして、鬼の時計を見る。もうあまり時間が無いっ!!

「ごめんよォォ。幸子ちゃんはああいってくれたけど、俺本当に弱いのよ!! 本当にダメな奴なの!! でも…でも…こんな最後あんまりじゃないかァァァ」
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