第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
開けた場所には、1軒のボロボロの小屋があった。そして、数人の鬼殺隊員も。しかし、それらは全て糸によって吊り上げられており…さらに、数名の鬼殺隊員の中には…明らかに人間だと言いきれない姿の者もいた。
「……な…何あれ何あれ!! 人間が…蜘蛛に…されてんの!?」
そして、この辺りは刺激臭が凄かった。嗅覚が優れた兄なら卒倒していることだろう。…いや、もしかしたら風向きによって、この山で兄の長所が発揮されていない可能性も考えられる。善逸さんが咳をしながら鼻を抑えた。
ギッ
「っ!?!?」
吊り上げられている小屋がひとりでに開き始め、善逸さんがビクッと体を震わせる。………鬼は……あそこか!
「水の呼吸 捌ノ型 滝壷!!」
私は田山さんを善逸さんに任せると、勢いよく飛び上がった。鬼が私をじろりと見た。
「斑毒痰」
毒だっ!? 私は咄嗟に後ろを見た。ガクガクと震えながらも田山さんを抱える善逸さんがいる。
「水の呼吸 …参ノ型 流流舞い」
私は技を使いそれを地面にたたき落とした。そして、小屋を足場に使い、力いっぱいに踏み込んだ。
「炎の呼吸…壱ノ型 不知……っ!?」
技は不発に陥った。鬼を庇うように鬼殺隊員となった蜘蛛たちが立ち塞がり、私は一瞬…躊躇ってしまったのだ。その隙を鬼が見逃すはずもなく、私に糸を巻き付けた。
「幸子ちゃん!!」
私は近くの木に叩きつけられ、そのまま糸で拘束される。…こんな糸…すぐに燃やして……
「やめときな。そんなことをすれば、お前達の仲間も一緒にお陀仏だぜ」
私の周りには蜘蛛にされた鬼殺隊員たちがいた。皆、血走った目は生気を感じられないが、まだ助けられる状態だ。私は唇を噛んだ。
「そうそう。お前は大人しくしときな。累が…弟がお前に会いたがっているからな」
「る…い…!?」
聞き覚えのある名前に私は目を開いた。累…私の記憶通りなら……彼は下弦の鬼だったはずだ。鬼舞辻無惨が特に気に入っていた鬼の1人。彼がこの山に!?
「そこで大人しく待っていろ。あいつを俺の奴隷にするまでなぁ…」
ジロリと善逸さんを見る鬼。善逸さんはビクッと体を震わせた。
「俺お前みたいな奴とは口利かないからな!!」