第13章 那田蜘蛛山 ~刺激臭~
「さ…最悪だよ!!!! 炭治郎たちは見つかんないし、この辺くさいし!! くさい!! もう泣きたい!! ずっと蜘蛛がカサカサする音すごい気持ち悪いし、幸子ちゃんが俺のために歌ってくれてんのに邪魔するし!!!!!! いや、蜘蛛も一生懸命生きているんだろうけどさ!!!!」
あ…あまりに色々なことが起きすぎて、キャパが超えてキレ散らかしてる…。善逸さんは私の言葉なんて聞いておらず、キィィと蜘蛛に怒鳴っていた。そして、後ろからガサッと音がした。
「もーっ…うるさいよじっとしてて!!」
そして、振り返った先にいたのは………人間の頭部を持った大きな蜘蛛だった。その蜘蛛は少しばかりの抜け落ちきれていない髪を持った頭部で、ふたつ見える赤く血走った目でこちらを見ていた。
「こんなことある!?」
「お…落ち着いて善逸さん!!」
善逸さんは私の手を引き、山の奥へと走り出した。私の片腕にはそれに収まりきっている田山さんの姿があった。……どんどん小さくなっている。これも鬼の技かなにかなのか…。その間にも、善逸さんは叫び続けていた。
「人面蜘蛛なんですけど!! どういうこと!? 夢であれ夢であれ夢であれよお願い!! 夢であってくれたなら俺頑張るから!! 起きた時、禰豆子ちゃんや幸子ちゃんの膝枕だったりしたらもう凄い頑張る!! 畑を一反でも二反でも耕してみせる!!」
善逸さんからじんわりと汗が伝わってくる。これは何を言っても聞いてくれなさそうだ。そして、不意に繋いでいた手は開放され、顔を上げた私は固まってしまう。
「悪夢から覚めてくれぇーーーーっ!!」