第17章 守るべきもの
その瞬間、身体が動いた。
「辞めて………!」
彼女はナポレオンの前に立ち、腕を広げた。
「お前………! どうしてここに………っ!」
「首飾りの力で戻ってきたの。
………伯爵、剣を収めてください」
怒りが燻る瞳。抜き身の刃を恐れることなく、告げる。
「なぜ彼をかばうんだい? 君を捨てた男だろう」
「それでも………、私は彼を愛しているんです」
「そうか………。」
再び振り下ろされる刃。彼女は身じろぎすらしなかった。
それどころか………、覚悟を決めたようにゆっくりと瞼を閉じて。
………だけど。
切り落とされたのは………、彼女の髪の一房。
「女性の髪は命に等しい。俺はこれを頂くよ」
微笑んだそのおもては、娘を送り出す父親のように晴れやかなもので………。