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君色に染まりて【イケヴァン長編◆裏】

第17章 守るべきもの


その瞬間、身体が動いた。


「辞めて………!」

彼女はナポレオンの前に立ち、腕を広げた。


「お前………! どうしてここに………っ!」

「首飾りの力で戻ってきたの。

………伯爵、剣を収めてください」

怒りが燻る瞳。抜き身の刃を恐れることなく、告げる。


「なぜ彼をかばうんだい? 君を捨てた男だろう」

「それでも………、私は彼を愛しているんです」

「そうか………。」


再び振り下ろされる刃。彼女は身じろぎすらしなかった。

それどころか………、覚悟を決めたようにゆっくりと瞼を閉じて。



………だけど。



切り落とされたのは………、彼女の髪の一房。

「女性の髪は命に等しい。俺はこれを頂くよ」

微笑んだそのおもては、娘を送り出す父親のように晴れやかなもので………。




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