第14章 温もり
同刻、アズリの私室にて………。
「ん………。」
彼女はゆっくりと起き上がり、傍らにナポレオンがいないことに気づく。
「どこに行ったんだろう………?」
寝台から出ると、身支度を済ませ………。
(おばあちゃん………。あなたの真実は、どこにあるの………?)
真実を知りたい。その一心で、つま先を目指した………。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
向かった先は、図書室で………。
デスクに置かれたままの古びたアルバムを手に取ろうと………。
手が滑って、バラバラと写真が舞う。
「いけない………! やっちゃった………。」
慌てて写真を拾おうとして、ピタリと手が止まる。
そのうちの一枚を見つめた途端、頭の奥で稲妻が走った。
(え………。伯爵と一緒に映ってるのって………。)
ドクンッ、ドクン、と衝撃に冷えた身体の中心で
心臓だけが嫌な音を立てていた。
「どうして………!」
そこに映っていたのは………、一度だけ写真で見た事のある母その人だった。
涙を押し込め、写真を手に靴の音を響かせた。