第14章 温もり
「ん………。まだ夜明け前か………。」
傍らを見つめると、彼女はまだ眠っていた。
「………幸せそうに微笑ってるな」
そのおもてを優しい微笑で彩ると、そろりと寝台から出る。
その足で、とある『場所』へとつま先を目指した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「伯爵………、呼んだか?」
控えめなノックのあと。呟いて。
「………入りなさい」
穏やかな声が命じる。あの日と同じように。
そっと中へと足を踏み入れると、そこには先客がいた。
「貴方がナポレオンですね?」
穏やかだけれど、心の読めない微笑。
左右違う色彩の瞳が 品定めするように己を映した。
「そういうあんたは?」
「失礼。私はウィリアム・シェイクスピア………、劇作家ですよ」
「あぁ………、よろしく」
握手を交わすと、その手はひんやりと冷たかった。
「では………、始めましょうか」