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君色に染まりて【イケヴァン長編◆裏】

第2章 夢幻の果てに


なかば廊下を進んだところで立ち止まり。掌で目元を覆う。

「なんだよ、あれ………。」

己の中に走った衝動。去り際を呼び止めて告げられた言葉。

その時の笑顔が 脳裏に残ったままで………。


「あれ、ナポ君じゃん。

………そんなトコでどうしたの?」

大抵の女性ならば虜になりそうな………、蕩けるような笑み。

………アーサーだ。


「別になんでも。それより………、俺はもう行くからな」

そう呟いて廊下を進もうとする彼の足を止めたのは………思いがけない言葉。


「『アズリ』………、でしょ。

あのコのせいで、そんなに心を乱されてる………違う?」

思わず足が止まる。そんな彼の内心を知ってか知らずか、彼はさらに畳み掛けた。


「あのコが伯爵の考えを見透かしたら、

あのコはどうするんだろうね………?」


振り返り、厳しい視線を向けど。

アーサーはそれを悪戯な視線ではね返す。


「………あんた等の好きにはさせねえよ」

低く冷たく言い放った。

彼の言葉に、らしくなく乱された心を隠すように。



廊下の向こうに消えた彼に、呟いた。



「やれるモノなら、ね………。」

浮かべた妖しい笑みを、三日月だけが見つめていた。





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