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君色に染まりて【イケヴァン長編◆裏】

第2章 夢幻の果てに


「いやああぁ………っ!」

悲鳴とともに、意識が覚醒した。

「はぁ、はぁ………っ。

今のは……なに……っ?」


「どうしたんだよ?すげえ悲鳴だったが」

『入るぞ』と声を掛けてから、やって来たのは。


「ナポ、レオンさん………。」

ぽろぽろと感情が零れて、気づけば。


「大丈夫だ。ただの夢………だろう?」

耳元をかすめる優しい声に、抱きしめられているのだと気づく。


ゆっくりと深呼吸することを促されて。

従えば、だんだんと心のざわめきが静まっていく。


「………ありがとう。もう……大丈夫です、」

しばらくして、彼女が呟いた。

ナポレオンの胸を押し返して、解放を促す。


「それと………、みっともないところを見せてごめんなさい」


「………気にすることはねえよ」

儚く笑んだその表情が あまりに哀しそうで………。

再び抱きしめてしまいたい衝動が胸をかすめたが、押し込めた。


「俺はもう行くからな。なにか遭ったら呼べよ?」

そう呟くと、立ち上がる。


「ナポレオンさんっ………。」

思わずふり返る。

彼女は………優しさに染まって微笑んでいた。


「………ありがとう。

あなたが来てくれたから………、安心して眠れそうです」


「………それなら何より」

くしゃっ、彼女の髪を混ぜ、にやりと笑んで。


今度こそ、振り返ることなく去って。

彼女の眼差しを、後ろ背に感じながら。




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