第1章 満天の星に願いを込めて*秀吉、政宗、三成*
《満天の星に願いを込めて 三成ver.》
「三成君どうしたの?こんな時間に」
襖を開けた舞様が、びっくりしたように目を開く。
私は一回くすっと笑うと、いつものように舞様の頭を優しく撫でた。
────七夕の夜更け、私は舞様の部屋を訪ねた
とても大事な話があるから。
これからの私達に、とても重要なこと。
話すのは、今日でなければ……絶対駄目だ。
「今日は折角の七夕だったのに、逢瀬にも誘えませんでしたから。せめてお顔だけでも見たくて」
「でも、明日はもう出発でしょう?準備とか大丈夫?」
「はい、あとは身体を休め、英気を養うだけです」
「そっか……」
心配そうに私を見上げる舞様。
それは、当然と言えば当然だろう。
私は明日から遠方に戦に行く。
いつもは後方支援の私が、初めて将として一隊を率いることになった。
勿論、先陣には出ないけれど……
それでも、大勢の命を任せられたと言う意味では、課せられた責任は大きい。
私自身、きっと一皮剥ける段階に入ったのだ。
武功を立て、実力で周りを認めさせねばならない時期になったのだと。
(でもそれも、周りに認められ始めた証拠だ)
信長様から、仰せつかった任務。
西方の領土拡大に伴って勃発した、反乱を鎮圧する事。
私も兵を駒として動かさねばならない。
そして、当然ながら命も危険に晒され……
遠方故に、簡単には帰ってこれない。
そんな中、愛しい人を安土に残していく。
舞様は一緒行きたいと申し出てくれたが、あまりにも遠すぎる故に、女の方には過酷な旅時になると判断され、同行は却下されてしまった。
いつ帰ってこられるかも解らないから……
私は今夜舞様に『誓い』を立てに来たのだ。
「私は明日から戦に赴きます、いつ安土に戻れるか解りません。だから…貴女と約束したいことがあります」
「約束?」
「はい、私達が織姫と彦星のように、また逢えるように…貴女と約束を結びたい」
私はそう言って、舞様の左手を取ると、目の前にすっと跪いた。
そして、その小さな手を握りしめ……
下から舞様を見上げ、ありったけの想いを紡ぐ。