第1章 満天の星に願いを込めて*秀吉、政宗、三成*
「舞」
「……っ!」
俺が声をかけると、舞はびくっと震え、こちらに向けて顔を上げた。
あーあ、涙目に赤い顔。
そんな舞の表情を見て、心がチクリと痛む。
俺は足早に舞に近づくと、隣に同じようにして、しゃがみ込んだ。
そして、髪が崩れないように、そっと頭に手を回し、優しく抱き寄せながら舞に言った。
「勝手にどっか行くな、危ないだろ」
「……」
「さっきは悪かったな、独りにさせて」
「……べ、別に」
「それから、折角の逢瀬で寂しい顔させたのも」
『悪かったな』と頭を引き寄せ、ぽんぽんと撫でる。
優しく優しく何度も撫でていると、舞はふっと短く息を吐き、俺に頭をもたれ掛けさせてきて……
やはり、少し拗ねたようにぽつりぽつりと話し出した。
「……ごめん、ヤキモチ妬いて。政宗の言う通り、私ヤキモチ妬いてたの。図星指されて、カッとなって…バカとか言ってごめんね」
「そうなのか?」
「政宗がカッコイイのは私が一番よく知ってるから。だから女の子の目を惹くの当たり前なのに…政宗には、私以外は見てほしくないなんて、そんな子供っぽい事思ってる」
「……っっ」
(なんだ、この底無しの可愛さ…いい加減にしろ)
紡がれる可愛い理由に、本当に参ってしまう。
こんな風に素直な所は、舞の長所だが、あまりに直球すぎる想いに心は乱されっぱなしだ。
本当に…どこまで惚れさせれば気が済むのだろう。
「ばかだな、お前」
俺がすっと唇を額に押し当てると。
舞はびっくりしたように、小さく息を飲んだ。
こんなに愛しい女に妬いてもらって、俺は幸せだな。
そんな小さな嫉妬にすら、喜びを感じてしまう。
「俺はお前しか見えてない、当然だろ?」
「政宗……」
「誰よりも、何よりもお前が好きだ。お前はこの世でたった一人の、俺だけの織姫だからな」
「……っっ」
「だから、お前も俺だけ見てろ。俺は七夕だけの逢瀬じゃ足りない…いつでもお前を欲しいと思ってるからな」
瞳を覗き込めば、星がきらきら光ってる。
舞は少し困ったように微笑んで……
やがて『私もだよ』と可愛く答えた。