第1章 満天の星に願いを込めて*秀吉、政宗、三成*
《満天の星に願いを込めて 政宗ver.》
「……っ、ヤキモチじゃないもん!政宗のばかっ!」
舞が涙目になって、そう叫ぶ。
そのままくるりと方向を変えると、人混みの中に向かって一目散に走り出した。
「ちょっと待て、舞っ……!」
追いかけようとしても、祭りで賑わう人混みが邪魔をして追いつけない。
小柄な舞は、上手く人の間をするりするりと抜けて走っていき……
遂には、その姿を見失ってしまった。
(くっそ、俺としたことが……!)
自分のした行動に呆れ返り、ため息が出てしまう。
あの場では、舞にあんな事を言うべきではなかった。
────七夕の今日、舞と神社の祭りに来て
舞が屋台にりんご飴を買いに行き、俺が一人になった隙に女達に囲まれ、一緒に見て歩こうだのなんだの騒がれてしまい。
買って戻ってきた舞はその女達に気後れし、俺から少し離れて、俺や女達を見ていて。
俺は舞が居るからと、なんとかそのしつこい女達を振り切って、舞の元へと戻ったのだが。
でも、舞は少し拗ねたような表情になっていて。
『綺麗な女の人に好かれて良かったね』とか言うもんだから、『なんだ、ヤキモチか?』と、少し意地悪っぽくからかってしまい。
で、あの舞の叫び声という訳だ。
完全に言う言葉を誤った。
『ヤキモチか?』なんて、からかうんじゃなく……
『独りにして悪かったな』と詫びるべきだった。
遠巻きで俺を見ていた時の、舞の寂しそうな表情を思い出す。
早く探して、仲直りしなければ。
まだ、そう遠くには行っていないはずだ。
(折角の七夕の逢瀬、無下にしてたまるか)
人混みを掻き分け、舞の姿を探す。
舞は今日、鮮やかな天色の浴衣を着ていた。
天色の浴衣に、紺地の帯。
結い上げられた髪には、贈ってやった玉簪を刺していた。
視線を凝らし、必死にあの小さな後ろ姿を探して……
やがて、神社裏の人混みの少ない所まで来ると。
石燈篭の側にちょこんとしゃがみ込み、しゅんと小さくうなだれる舞の姿を見つけることが出来た。