第5章 ◆君が居れば、何も要らない*信長、秀吉、家康*
「っ……!」
途端に舞の瞳が見開かれ、頬が薔薇色に染まる。
何を約束したか、思い出したか。
そう、俺は貴様の元に帰ってきたら、他には何も望まん。
────舞、貴様以外はな
「で、でもお疲れでしょうし……」
「疲れてなどいない。貴様を抱きたいだけだ」
「抱きっ……信長様!」
「なんだ、急に膨れっ面になりおって」
さっきとは打って変わり、瞳を釣り上げ困ったような怒ったような表情になる。
何を今更照れることがある?
舞を抱いたのは一度や二度ではない、褥での恥ずかしい姿は何度も見ているし……
今更、拒む理由もあるとは思えない。
だったら素直に『抱きたい』と言っても、何の問題もない筈だ。
「も…そーゆー風に直球で言うからっ……!」
「直球に言うと、何か困ることがあるのか?」
「ありますっ!ドキドキして、困ります……!」
「なんだ、その愛らしい理由は。別に嫌ではないのだろう、顔が嫌がっていない」
「~~~……っ!!」
「戦から無事に戻れた褒美を、俺に寄越せ」
「わっ……!」
ふわりと横抱きにすれば、舞は小さく声を上げ、首にしがみついてきた。
温かく、柔らかな身体。
久しぶりに感じるその体温と感触に、安堵感と湧き立つ熱を覚えた。
────帰ってきたのだと
馬鹿みたいにそう思う。
己に安らぐ場所など無いと思っていた。
もしかしたら、今は微温湯に浸かっているのかもしれない。
けれど──……
その微温湯が、何とも心地よい。
舞のくれた帰る場所。
温かく、安らかな眠りを与える場所。
そして、俺を芯から満たす場所。
「あの、無理はしないでくださいね?」
「無理はしない、させるかもしれぬがな」
「えっ……」
「貴様に飢えている、堪能させろ」
「は、はいっ……」
そうして、そのまま唇を塞ぐ。
唇から伝わる甘さと温もりは、俺を『生きている』と実感させる。
そう、永遠の命などない。
命はいつか尽きるけれど…
それでも、この想いだけは尽きることがないと。
そんな風に思う。
今の一瞬が、永遠の刹那となって煌めくように。
────俺の心で星のように瞬いているから